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実質賃金が低下すれば、利潤も上昇し、それが投資を拡大させる効果も考えられる。

すなわち、無理やり国内の貯蓄と投資をバランスさせる必要はなく、過度の金融引き締めが、本来あるべき貯蓄投資バランスを過度に黒字にしていたと考えるべきである。 バブルを起こして無理やりに投資を高めるしかないが、それは誤りであるとわかったことではないか、という反論である。
また、国内投資が不足であれば、それは公共投資によって補うしかなく、財政政策のなすべき仕事である、という反論である。 しかし、貯蓄が過大で投資が過小であれば、海外に投資をすることになる。
国内貯蓄から国内投資を差し引いた残りは、経常収支の黒字であり、それは海外への純投資になるという関係がある。 そのときに、日本にも海外にも失業のない状況であれば、それでなにも困らない金融政策の誤りが大停滞を生み出した日本経済の大停滞は、財政政策ではなくて、金融政策の誤りによって生じたこと、財政政策ではなく金融政策の効果が強力だったことが、さまざまな実証的方法で確認できる。
90年代の金利は低かったが、それはインフレ率の低下と成長率の低下を反映したものだった。 なによりも物価が下落している以上、金融が緩和されていたとはいえない。
金融政策とは物価を決める政策であって、名目金利を決めることを目的とする政策ではない。 そのことについての混乱が、日本の金融政策を誤らせている。
ただし、金融政策がどのような経路を通じて90年代央までの停滞をもたらしたかについては明らかにしたが、なぜ金融政策が10年以上もの停滞をもたらすのか、そのメカニズムが明らかでないという疑問については、まだ十分には答えていない。 その答えは、次の第3あとでは、データの観察と統計的分析と金融政策が経済に与える影響の経路を説明することにより、マネーサプライの伸びを13%からマイナスにするような極端な金融政策が1990年代の大停滞を生んだことを示した。
しかし、多くの人びとは、90年代はじめまでの不況を、80年代末の過大な金融緩和の反動としての金融不況として説明することはできても、21世紀になっても実質成長率が低下したままであることは説明できないと考えているようである。 金融政策で数年の単位の経済変動を説明することはできても、10年以上も続く停滞を説明することはできないと思うようである。
なくて、物価の上昇を通じた実質賃金のカットである。 雇用の低迷は、さらに経済停滞を長期化させる要因になる。

仕事の技能は、実際第3章実質賃金の高止まりは、なぜ不況を長期化させるのか担は高まっていく。 賃金を下げても、債務の調整は終わらない。
債務が増大すれば、企業は必死になって製品価格を引き下げ、売り上げを増やそうとする。 個々の企業にとっては、価格を引き下げて売り上げを増やすことが可能であるにしても、経済全体では不可能である。
個々の企業の、なんとか売り上げを増やそうとする行動が、経済全体としては価格を引き下げ、売り上げを減少させてしまうのである。 こうして、経済は全体としての売り上げが減少する。
売り上げが減少すればカットではなくて、しかも、一雇用の低雇用を抑制することによって不況を長引かせる。 この状況は、さらに調整を難しいものにする。
企業が名目賃金をカットしても調整は終わらないからである。 バブル期の債務の調整が終わっていない段階で企業が名目賃金の低下に成功すれば、さらに調整の難しい状況に陥っていく。
名目GDPの6割が賃金であり、消費である。 賃金が減少すれば消費が減少し、消費が減少すれば名目GDPも減少する。
名目GDPが減少すれば、経路がある。 物価上昇率が低下するとき、金融政策の失敗が長期の停滞をもたらす要因として、実質賃金を上昇させてしまうとい、実質的な負災に陥っていく。
必要なのは、名目賃金と賃金のデフレスパイ。 常識的には、景気がよければ実質賃金は上昇し、景気が悪ければ下落する、と多くの人は考えているだろう。
しかし、90年代の日本とアメリカのデータを見ると、この常識は破られる。 アメリカを見ると、90年代の力強い生産の拡大にもかかわらず、実質賃金は低下を続け、上昇しはじめたのはやっと96年になってからのことである。

しかも、この上昇のかなりの部分は、消費者物価指数の改訂によるものである。 アメリカは消費者物価指数が新製品や商品の性能向上分を正しく反映していないという批判を受け、99年11月、50年までさかのぼって消費者物価上昇率を年1%弱引き下げた。
これによってやっと96年から実質賃金が上昇することになった。 仕事に就いて、仕事をすることによって形成される。
若者がそのような経験をもたなければ、人材の質は低下してしまう。 その影響は次世代にまで引き継がれ、きわめて長期の経済停滞の要因となるだろう。
以下、90年代から現在まで続くこの過程を、順次、説明していきたい。 また、生産が増加しているにもかかわらず、実質賃金が増大しないのは、70年代以降のことである。
もう30年近くも、アメリカでは景気がよくても実質賃金が上がらない状況が続いていたのだ。 一方、日本はどうだろうか。
90年代はじめのバブル崩壊による生産の急激な落ち込みにもかかわらず、実質賃金の上昇率はわずかに低下しただけである。 もちろん、80年代後半のように、生産が急激に伸びても実質賃金の伸びはわずかということもあるのだから、一時的であれば大きな問題にはならないだろう。
しかし、そのような状況が続けば、企業は雇用を維持できず、失業率が徐々に高まってくる。 98年後半、失業率がはね上がるとともに、さすがに実質賃金も低下することになった。
なお、97年にも実質賃金の低下が見られるが、これは消費税のためである。 労働者にとっては実質賃金が低下していても、企業のコストとしての実質賃金が低下したわけではない。
アメリカにおける実質賃金と失業率の関係を見ると、日本とは逆に、生産が伸びるなかで実質賃金が減少している。 そういう状況であれば、次第に雇用が伸び、失業率が低下してくる。

つまり、失業率の日米逆転は必然だったのだ。 では、日本の実質賃金は、生産の減少にもかかわらず、なぜ上昇していたのだろうか。
まず、第一の要因から説明しよう。 日本は生産し、海外に輸出するばかりではなく、労働時間を短縮し、より人間らしい生活をすべきとされた。
その結果、平均で週44時間労働(1日8時間労働で隔週土曜休みが平均だった)であったのを完全週休2日制にするべきとされ、バブル崩壊後の90年代はじめに実施された。 時短自体は誤ったことではないが、実質賃金上昇の第二の理由はデフレである。
名目賃金が下がりにくいなんらかの事情があれば、デフレーションによって実質賃金が上昇してしまう。 それ以外の月の「給与総額」のデータを被説明変数、その月に対応する「きまって支給する給与(賞与を除くもので、残業代などは含まれるこのデータを説明変数として推計する。
この結果に、ボーナス月を含むすべての月の「きまって支給する給与」のデータを入れれば、ボーナス以外の月給与総額を換算でき、給与総額から、この推計式による換算結果を引くと、その差がボーナス分となる。
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